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日々の花々

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草の花|福永武彦著をよんで。

写真家澁谷征司さんの「a little duet」というイベントにて作った世界に1冊の写真集「草の花|福永武彦著」。世界に一冊。丁寧に扱いたかったので、東京ではなく京都の進々堂で読み始めた。

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サナトリウムの僕(主人公)が書く小説「第一の手帖」のこの会話

-愛するといふのは、つまり愛されることを求めるということぢやないんですか?汐見さんが僕を愛してくれるのも、僕が汐見さんを好きになるのを待ってゐるからなんでせう?
ー僕はただ愛しさへゐればいいのだ。
ー違ふと思ふ。それだつたら汐見さんは何もさう苦しむことはない筈ぢやありませんか?

汐見さんからの愛の言葉に対し藤木くんがいった言葉は衝撃的でした。

この本のたった4行から、片想いの我欲について友達とあれやこれや語り合った。恋に恋する恋のナルシシズムが可愛いものに思えてしまう。片想いの我欲、一途さが一変して固執と執着ふりむかせたい、自分をみてほしいという欲求になるのである。

他にも、相手とはわかりあっていないと思っているのに、相手が去ってしまうと、わかりあっていたのになぜ?と追いかける、失うことや良きせぬ突然の相手の行動への惧れの感情。

ラストの佐藤千枝子さんが僕に宛てた手紙も読んでいて心が割れそうになった。お互いに想い一緒にいるのに、なぜかお互いに片想いの儚き青春の恋愛物語。悲恋の美しさと誰かを想うなかに生まれる自分の醜き感情と。愛することと孤独。硝子のような世界だった。

片想いの我欲について話した友人とは「わかりあえないことをわかりあう」ということについて語り。また別の友人は「人間は欲望だらけだから可愛いよ。」という。その友人は、とてもチャーミングな人。

読む目的としても、この本を選んでよかったと思う。旧漢字と口語体だったので新潮文庫の現代版を本屋さんで探すもなかなかおいていない。ネットでぽちっとすると変えるけど、やっぱり自分で探し本棚をみて手に取るという行動が私には大切で。雑誌は電子書籍の方がいいけど、本は装丁含めた紙媒であってほしい。最近の世の中は大量生産で消費されるものばかり。全てが代用品ですりかえられてもわからないようなコピーのコピー。私はそういうものに興味がない。どのジャンルにおいても生誕110年といわれ愛され続ける小津安二郎監督の映画のような作品に出逢いたいし、そういうものを身につけられる人になりたいと思う。

手軽な値段で買った本は手離してしまうかもしれないけど、世界に1冊の本は私がこの世からいなくなっても誰かの形見に渡したい、その後も誰かのもとへ、という気持ちがわく。衣・住・食に関わるもの、無駄遣いはせず、そういう気持ちになれるものと向き合っていきたいと残りの人生についての決意。




先日開催された澁谷征司さん写真展『RIVER RIVER』@スパイラルガーデンもとても素晴らしく。今も目を瞑ると鮮明に浮かぶ、2つ並んだ「葡萄の木」と「山吹色の花に囲まれた木」の写真。
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by hibinohanabananew | 2013-04-27 22:12 | 読書
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